▼今週の注目記事  税新1849号 1面より

関心高まる信託
積極活用で顧問先支援

 信託への関心が改めて高まっている。刑事事件で有罪判決を受けている被告が、家族信託を活用して「賠償逃れ」を図ったと報じられ、制度の自由度の高さが良くも悪くも注目された格好だ。報道の真否には疑義も出ているが、信託が財産の管理・承継のあり方を大きく変える可能性を秘めていることは間違いない。税理士は仕組みを十分に理解したうえで、顧問先での活用を積極的に検討していきたい。

「賠償逃れ」に悪用と一部報道

 特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップで総裁の野村悟被告が、「家族信託」で土地を親族に託していたことが明らかになった。報道では同氏が制度を利用した目的について「賠償逃れ」だったのではないかと指摘している。信託財産は強制競売や仮差し押さえができず、賠償金の回収が困難になる可能性があることがその理由だという。

 だが、多くの信託組成に関わってきた河合保弘司法書士は、「信託財産である土地が差し押さえられないとしても、土地から生じる利益などを受け取る権利(受益権)は差し押さえることが可能。この点から、債権者への詐害行為になることはない」と指摘する(詳細は4面)。信託の専門家の間では、「悪用すれば差し押さえから逃れられるといった誤解≠ェ広まってしまい、制度の正しいかたちでの普及が阻害されかねない」という懸念が生じているそうだ。

 いずれにしても、今回の報道が、信託制度への関心が高まるきっかけになったのは間違いない。顧問先からの信託に関する相談が増える可能性は十分にあるだろう。賠償逃れを企むのは論外だが、ほかの制度では難しいさまざまな思いを実現できる仕組みであり、顧問先の財産の管理・承継などの手助けになることが考えられる。

 家族信託の典型的な事例は、親が委託者、子が受託者となり、不動産を信託登記、金銭を受託者名義の信託専用口座に移動させるというもの。それぞれの信託財産を受託者が管理できる体制を作ることで、親が認知症や重病で寝たきりになった後でも、不動産の売却・換金や預金の自由な引き出しを実現する仕組みだ。

 認知症などで判断能力を喪失してしまうと、民法だけの観点では成年後見人が就任しない限りは財産の処分や運用が難しくなる。後見人が就任したとしても裁量の範囲は狭く、常に家庭裁判所の監督を受ける。認知症となった本人(被後見人)にとって不利とみなされる行為は不法と判断されかねず、本人の生活費をその都度引き出すことくらいしかできないケースがある・・・(この先は紙面で…)

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