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▼今週の注目記事  納税3875号1面より

税のプロが改正要望
相続税の計算方式が変わる?

 東京税理士会(足達信一会長)が、2026年度税制改正に向けた要望書で、相続税の課税方式を現在の「法定相続分課税方式」(相続分方式)から「遺産取得課税方式」(取得分方式)に改めるべきとの主張を打ち出している。同方式は戦後のわずかの間、採用されていたものの、さまざまな問題によって廃止された経緯のある「ワケあり」の方式だ。半世紀以上前に消えた取得分方式とは、どのようなものなのだろうか。

わずか8年で廃止された幻の制度

 日本に相続税が導入されたのは1905年のことだ。日露戦争の戦費調達を目的として、課税方法は「遺産課税方式」(遺産方式)でスタートした。

 遺産方式は「遺産の総額」に応じて税率をかけるものだ。この方式では、相続人が何人いようがどのように財産分けをしようが、課される税額は必ず同額になる。「税負担を減らすために均等に取得したことにする」というような仮装分割行為が通用しないわけだ。

 ただ、同方式では、遺産1億円のすべてを取得した場合と遺産10億円のうち1億円を取得した場合では、取得額は同一であるにもかかわらず後者のほうが税率が高くなってしまうという問題点が挙げられる。にもかかわらず、この方式を採用した理由には、当時の相続のほとんどが、長男が遺産のすべてを取得する「家督相続」が一般的だったためだ。遺産にかけた税金がそのまま1人の相続人の税負担になるというシンプルさが当時は成立した。

 しかし第2次世界大戦を経て、GHQの旗振りのもと日本の税制は大転換点を迎える。経済学者カール・シャウプ氏らの勧告により戦後5年目に、相続税の課税方式は「取得分方式」に改められることになった。

 「取得分方式」は、それぞれの相続人が実際にどれだけの財産を相続したかで税率を決める方法だ。多く取得した人にはその分高税率がかかり、遺産を細かく分割すればするほど税率が下がる。同じ額を取得しても税率が異なるというような「遺産方式」の弱点をカバーしているが、問題もあり、同じ10億円を2人の相続人で分けるケースでも、5億円ずつ分割する場合と8億円と2億円で分割する場合とでは相続税の合計額が変わってきてしまうのだ。「遺産方式」と逆に、税負担を抑えるための仮装分割を助長してしまうという懸念がある・・・(この先は紙面で…)

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