▼今週の注目記事  社長のミカタ 9月号1面より

裁判でわかってきた
総則6項の基準のイマ

 近年、相続税の財産評価基本通達総則6項、通称「総則6項」をめぐる判決が相次いで出されている。同項をめぐっては、適用基準が明文化されていないことから、納税者と当局の間で争いの種となってきたが、近年の複数の判決によって、その適用基準がある程度明らかになってきている。総則6項の適用基準は現在どうなっているのか。

国税当局との争いの種

 総則6項は、相続財産を評価するにあたってのルールを定めた法令解釈通達の総則において、「通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と規定されている。

 規定のとおり、その適用基準は「著しく不適当」としかされておらず、明確な境界線があるわけではない。そのため、納税者が行った税務処理が「著しく不適当」かどうかで、国税当局と納税者が対立する例がたびたび起きてきた。対立が司法の場に持ち込まれるケースも複数あり、それらの裁判例でも、当局が勝ったものもあれば、納税者の相続税対策が認められた場合もあり、司法判断も個々の事情によりケースバイケースとなっている。

 ただ、近年になり、複数の裁判例が積み上がるなかで、その基準の輪郭がぼんやりとであるが、見え始めているのも確かだ。

 近年続く、総則6項関連の判決の第一弾ともいうべき事例が、2021年4月に下されたタワマン節税をめぐる最高裁判決だ。高齢の被相続人が、マンション2棟を購入し、相続人が通達の評価ルールに従って両マンションを評価して申告したところ、総則6項を適用された。当局が再計算した評価額と、納税者が主張する通達評価額との隔たりは約9億円にもおよんだ。この事例で、最高裁は「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する」として、当局の主張を認めた。この判決により、当局は「勢いづいた」(国税OB税理士)とみられ、それまで年1〜2件にとどまっていた総則6項の適用件数は、翌年に年間10件ほどに跳ね上がった。

 だが、この裁判で注目するべきは、判決そのものよりも、「時価と評価額の著しい乖離のみでは、総則6項を適用する合理的な理由にはならない」との基準が示されたことだ。この点が重視されたのが、24年8月に判決が下された、いわゆる「仙台薬局事件」だ・・・

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