▼今週の注目記事  社長のミカタ 8月号1面より

信託で財産管理
事業承継にも有効

 改正信託法の施行(2007年)でにわかに注目された家族信託の制度が、いまあらためて脚光を浴びている。ただ、法律の専門家でも制度の全容を理解するのは難しく、実際に利用を検討するまでには高いハードルが待ち構える。まずは中小企業の経営者がどのように使える可能性があるのかなど制度の概要を確認したうえで、専門家に相談しながら活用を検討するようにしたい。

司法書士らプロの助言必須

 信託制度があらためて注目されているのは、特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップで総裁の被告が、「家族信託」で土地を親族に託していたことが明らかになったためだ。制度の自由度の高さに良くも悪くも関心が寄せられている。

 報道では同被告が制度を「賠償逃れ」のために悪用したのではないかと報じている。その利用目的の指摘には疑義もあり、本紙の姉妹紙『納税通信』で「未来信託の事案紹介」を連載している河合保弘司法書士は、報道の背景に「制度の仕組み自体への誤解」があると断じている。

 利用目的に関する真偽のほどはさておき、今回の報道で信託があらためて脚光を浴びたのは間違いない。そして、財産の管理や承継のあり方を大きく変える可能性を秘めた制度であるのも確かなことで、このタイミングで信託の概要を確認しておきたい。

 信託できる財産は不動産や金銭に限らず、制度的には「特定可能なプラス財産」がすべて含まれる。中小企業の株式も当然にその対象で、自社株を信託制度に組み込むことで円滑な事業承継を実現できる可能性がある。

 具体的にみていくと、まず自社株は大きく分けて、配当をもらう権利や残余財産の分配を受ける「財産権」と、会社に対して株主としての権利を行使する「議決権」から成り立っている。信託ではこの二つを切り離し、後継者に「議決権」だけを渡すことも可能だ。

 例えば事業の後継者である長男だけに経営権を集中させつつ、ほかのきょうだいにも財産としての自社株を引き継がせたいなら、信託で切り分けた議決権のすべてを長男に託すようにすればよい。経営に関与する気がないほかのきょうだいが、株式の財産的価値だけを求めていて、議決権の行使はむしろ重荷になっているというケースは珍しくない。そうした場合に、「財産権は引き継いだうえで、面倒な議決権の部分だけを受託者に託させてほしい」と伝えれば納得を得やすいはずだ・・・

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