▼今週の注目記事  社長のミカタ 3月号1面より

5人に1人が発症!
認知症時代の相続対策

 身内の誰かが認知症になれば家族にとっては一大事だ。特に、それが経営者であれば個人資産はもちろん、判断能力がないことを理由に事業用の資産を動かすことも制限され、経営の継続が困難な状況になりかねない。株式譲渡などもできなくなるため相続対策や事業承継も制限される。高齢になると誰でも記憶力が衰えてしまう。認知症になった後の心配を減らすためにも、事前の対策を講じておきたい。

法定後見制度が大きな足かせに

 厚生労働省によると国内の認知症患者数は年々増加傾向にあり、2025年にはおよそ700万人に達し、65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症になると予測している。民法では、認知症を患ったひとは「意思能力のない者」として扱われ、基本的にすべての法律行為に制限がかかる。

 そこで、患者に代わって財産の処分や運用をするために活用されているのが成年後見制度だ。1999年の民法改正で従来の禁治産制度に代わって制定され、翌2000年4月にスタートしている。

 制度には「任意後見」と「法定後見」の2種類があり、任意後見制度はあらかじめ患者が任意に選んだひとを後見人とする。これに対して法定後見制度は家庭裁判所が選んだ親族のほか、弁護士や司法書士といった専門家が後見人になる。認知症を患ってからは、自分で後見人を選ぶ判断能力がないため、法定後見制度しか利用できないことになる。

 ここで問題になるのは、法定後見人は、あくまで患者本人の財産等を守ることを目的としているため、患者の家族のためのお金の移動や、経営者であれば法人のための相続対策はできない点だ。法定後見人による資産管理が周囲のひとにとって大きな足かせとなるケースも少なくない。

 ある会社の例では、会長が脳梗塞で倒れ、認知症の診断を受けた。入院する会長の財産を管理するための法定後見人に弁護士が選ばれ、会長のキャッシュカードや通帳はもちろん、土地の権利書、会社に貸し付けたお金の借用書や会社の決算書の写しといったものを弁護士に引き渡すことになった。ただ、この中には家族の日常の生活費なども含まれていた。法定後見人は患者本人の財産を守る決まりとなっているため、家族はこれまでの生活水準を維持することができなくなってしまった。

 判断能力がなくなったひとの財産を悪意のある第三者から守るための制度が、周囲を不幸にしてしまう結果となることもある。そうならないためにも認知症になる前の準備が欠かせなくなる。

 まずは、家族が自由に使えるお金を、認知症になる前にある程度渡しておくことが必要だ。例えば今年の1月に改正された「相続時精算課税制度」は、2500万円までの贈与が非課税となり、相続発生時に課税される制度なので、認知症対策として生前贈与をする場合には一考の価値がありそうだ。納税時期を先延ばしするだけの制度とはいえ、一度に多額の現金を渡せることに加え、資産の状況によっては大幅な節税も狙える。

 患者の家族が自由に使えるお金を増やす方法としては「家族信託」の利用も進んでいる。自身の保有する資産が凍結されてしまう前に家族へ託し、その管理・処分を任せることができる。そのため、判断能力が低下してしまった後でも、本人名義の資産を処分することが可能だ。この制度も本人に判断能力がある場合しか利用できないため、早いうちの準備が必要だ・・・

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