オーナー社長向け財務・税務専門新聞『納税通信』。
経営者のみならず、会社経営のパートナーである税理士等専門家からも貴重な情報紙として多くの支持を得ています。専門記者による国税関連機関、税理士等への密着取材で培われた報道内容は、一般紙や経済・ビジネス雑誌では決して読むことはできません。
建設業界では、工事中の騒音などで周辺住民とトラブルになることを防ぐため、事前に住民や関係者に金銭を渡すことが珍しくない。「近隣(地元)対策費」「斡旋料」といった名目で処理するこうした支出は、税務上、一定のものを除いて損金算入できない。なかには、利益の圧縮による税負担減を目的に、近隣対策費を損金算入できる別の費用に紛れ込ませる建設会社もゼロではないが、こうした偽装≠ヘ税務調査で容易に見破られてしまうため、厳に慎みたい。
一方で、損金不算入を覚悟して近隣対策費として計上したものが、より厳しい℃g途秘匿金と認定されてしまうこともある。
過去には、ゼネコン準大手の戸田建設が民間病院建設の受注・施工円滑化を図るため、地元有力者や関係者に5500万円に上る金銭などを渡し、会計上は「地元対策費」「斡旋料」として処理していた費用が、「使途秘匿金である」として追徴課税された。地元対策費と使途秘匿金では、損金算入できないことには変わりないが、使途秘匿金となれば別の税負担が必要になってしまう。
使途秘匿金は、事業者が支出した金銭などのうち、相手方の氏名等を帳簿に記していないものをいう。使途秘匿金は違法あるいは不当な支出の可能性があるとして罰則的に重い税負担が課され、通常の法人税に加え、支出額の40%の税額が追加で課される。通常の法人税の納付を求められない赤字法人であっても、使途秘匿金課税は免れない。
使途秘匿金課税の誕生は、1993年までさかのぼる。同年に明らかになったゼネコンの汚職をきっかけに「使い途が分からない支出がヤミ献金や賄賂などの不正資金の温床になっている」との批判が高まり、翌94年に創設された。当時の政府税制調査会は、使途秘匿金課税が企業活動や税務執行にどのような影響を及ぼすのか予測しにくいこともあって、「時限的なものに止めることが適当」と答申していた・・・(この先は紙面で…)