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▼今週の注目記事  納税3870号1面より

得するばかりとは限らない
節税目的の養子縁組

 法定相続人1人につき相続税の基礎控除額は600万円ずつ増える。そのため相続税の節税効果を狙う富裕層の間では、孫などを養子縁組するケースはかなりメジャーな方法だ。だが、節税効果のメリットだけでこのスキームに飛びつくと大きなしっぺ返しをくらうこともある。養子縁組による節税策を考えてみたい。

大きなしっぺ返しの可能性も

 孫や甥・姪などを養子にすることは、相続上、多くのメリットがある。養子として法定相続人になれば、1人当たり相続税の基礎控除額が600万円増え、同様に生命保険金の非課税枠が500万円、死亡退職金の非課税枠も500万円増える。これらの非課税枠を活用できれば課税対象となる相続財産を単純に養子1人あたり1600万円圧縮でき、圧縮したことで相続税率が下がれば、より大きな負担減が見込める。

 孫の場合、将来的には子から孫への相続で再び相続税が課されるところを、孫養子として財産を渡しておけば相続税の負担を一代飛ばせるわけだ。ほかにも、多くの相続対策は何年も前から計画的に実行することが求められるなかで、養子縁組は比較的簡単な届け出で受理日からすぐ効力を発揮するという即効性も強みといえる。

 また、被相続人が子どものいる相手と結婚したときは、被相続人の相続発生後、配偶者は配偶者として財産を受け取ることができるが、その連れ子には相続権はない。そのため連れ子に財産を遺してあげたければ、養子縁組を行い、実子と同じ扱いにしなくてはならない。

 養子縁組を使った相続対策については、相続税法の基本通達63条の2で、相続税の負担を不当に減少させるためと税務署が認めた養子については法定相続人から除外するという規定がある。そのため孫養子による相続対策も否認されるリスクはゼロではないが、実際には何をもって不当かを線引きするのは難しく、これまでに同規定によって孫養子が否認された例はないという。

 さらに2016年には、遺産相続をめぐって孫を養子にした男性の養子縁組が有効かどうか争われた裁判で、最高裁が「たとえ節税目的があっても、養子縁組をするという本人の意思が否定されない限り、ただちに縁組は無効とはならない」と判示した。この判決によって、孫養子を使った相続対策は司法のお墨付き≠得たともいえるところだ・・・(この先は紙面で…)

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