相続が開始すると、相続人は、①単純承認(プラス財産だけでなく借入金などのマイナス財産を含む一切の財産を無制限・無条件で承継することを承認する方法)②限定承認(相続人がプラス財産で利益を受ける範囲に限って、マイナス財産を相続する承認方法)③放棄(被相続人の財産のすべてを放棄し、一切の財産を相続しない方法)――の3つのうちのどれかを選ばなければならない。
このうち限定承認は、プラスの財産の額に限定してマイナスの財産を引き継ぐ形態であるため、借金をしてまで相続しなくてもよい。資産の全体がマイナスであっても、プラスの相続財産以上の負債を背負うことはない。プラス財産の範囲でマイナス財産を裁判所で清算してもらうが、債務を任意で弁済できなければ相続財産は換価処分されることになる。
限定承認のデメリットとしては、限定承認を行うには相続人全員で取り組む必要があり、一人でも反対があれば裁判所は認めてくれない点がある。さらに、限定承認では小規模宅地の特例が使えず、また被相続人から資産が譲渡されたものとして譲渡所得税が発生することも覚えておきたい。一般的に「マイナスはあるけど絶対に手放したくない資産がある」場合か、「プラスもマイナスも、いくらあるのは分からない」場合に、限定承認を選ぶことが多いようだ。