相続発生時には、遺言の検認手続き、相続財産の名義変更や登記など、さまざまな費用がかかる。これらを「遺言執行費用」といい、民法ではこの遺言執行費用を「相続財産の負担とする」と定めている。
ただし、これはあくまで民法の話だ。相続税法では、被相続人が生前に抱えていた借金などは相続財産から差し引けるが、遺言執行費用は被相続人の債務ではないため、控除できない。
相続税法において債務として遺産から差し引けるものには、借金のほか、住宅ローンの残債(団信保険に加入していない場合)、経営していた賃貸物件の敷金、未払いの公共料金や医療費など幅広いものが含まれる。
また葬式に必要な費用は債務ではないが、相続税の計算上では遺産総額から差し引くことが認められている。一方で墓石や墓地、仏壇などは、直接葬儀には関係しないとして債務から控除することはできない。
被相続人に課され、死亡後に相続人が納付する所得税などの税金も、それが死亡時に確定していないものであっても、債務として差し引ける。ただし、相続人などの責任で発生した延滞税や加算税は、その限りではない。