大家の許諾は必要なし借家権の相続  民法に優先する特別法の強い効力

 借地や借家の賃借関係においては、かつては大家が圧倒的に優位だった。しかし1992年に施行された借地借家法では、借り手に強い権利を認め、大家の一方的な退去勧告に従わざるを得ないというような事態は起こらなくなっている。大家の側からすれば、転居してもらうには一般的に借り手との交渉が不可欠で、それなりの補償金が必要になることも多い。
 現在の借地権は強い権限を有し、契約期日の到来に際しては契約の更新を地主に請求することができ、また契約を更新しない場合には建物の買い取りを地主に請求することもできる。この借家人の持つ権利は、相続後も引き継がれる。相続にあたって「契約したのは被相続人だから死去により契約は解除する」などと一方的に借主に通知してくるケースも現実にはあるが、こうした要求に法的に応じる必要はない。土地の賃借に関しても同様で、借り手は「相続で賃借権を取得しました」と通知するだけで手続きは終了し、権利の継承に関して大家の許可は一切必要ない。
 なお相続税申告に当たっての借地権の評価は、その土地の更地での金額に借地権割合を掛けて計算する。借地権割合は、国税庁ホームページで公開されていて、土地に路線価が定められていれば「財産評価基準書」の路線価図に、定められていなければ評価倍率表に記載されている数字を利用する。
 これらの借地権とは異なり、契約期間の満了をもって更新せずに借地権が消滅する「定期借地権等」もある。こちらの相続財産としての評価に当たっては、地権者の経済的利益、宅地の取引価額、相続発生時の定期借地権の残存年数に応じた複利年金現価率などを使って計算する必要があり、かなりややこしい。特徴としては、期間の定めのない借地権に比べてかなり低い評価額となる点が挙げられるだろう。


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