国税庁「相互協議の状況」公表  280件発生、繰越事案は773件

 国税庁はこのほど、2024事務年度の「相互協議の状況」を公表した。相互協議発生件数は前年度比32%増の280件、処理した件数は同11%増の242件、次年度に繰り越した事案数は前年度より38件増えて773件だった。処理件数と繰越事案数は過去最多。
 移転価格課税などによる国際的な二重課税について納税者から申し立てがあった場合、国税庁は租税条約などの規定に基づいて外国税務当局と相互協議を行い、その解決を図っている。また、納税者の予測可能性を高め、移転価格税制の適正・円滑な執行を図る観点から、事前確認についても相互協議を行っている。
 24事務年度の相互協議発生件数280件のうち、事前確認に関するものは前年度比16%増の194件、移転価格課税などに関するものは同91%増の86件だった。相互協議の発生件数は、納税者からの申し立てで行われた件数と、相手国の税務当局からの申し入れで行われた件数を合計したもの。
 処理件数242件のうち、事前確認に関するものは同22%増の194件、移転価格課税などに関するものは同21%減の48件だった。処理事案1件当たりに要した平均処理期間は39.6カ月で、前年度より約7.8カ月長くなっている。このうち事前確認に関するものは約42.4カ月で同6.6カ月長期化。移転価格課税などに関するものは28.5カ月で同約7.0カ月長くなった。
 次年度繰越事案773件のうち、事前確認に関するものは前年度と同数の595件、移転価格課税などに関するものは同38件増の178件だった。繰越事案の相手地域は「アジア・大洋州」が最も多く、次いで「米州」、「欧州・アフリカ」となっている。相手国別にみると、米国が最多で全体の25%を占め、次いでインドが15%、中国が13%、韓国が12%、ドイツが5%。インド、中国などのOECD(経済協力開発機構)非加盟国・地域と繰り越した事案は334件で全体の43%を占める。OECD加盟国よりも合意のハードルが高く、長期化する傾向にあるという。


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