高市首相×トランプ大統領  接待外交から学ぶ おもてなしの税金

 高市早苗首相の外交デビューの相手として、アメリカのトランプ大統領が来日した。注目されたのが高市首相の〝接待〟だ。これを中小事業者に置き換えて考えてみれば、過大な接待費用の計上は税務署に「税逃れ」とみなされるおそれがあるので注意が必要となる。高市首相の接待外交を基に、中小事業者の接待に関する税務上のルールを整理しておきたい。
 取引先との接触の機会が多い役員や営業社員によく知られているのが、飲食費の「1万円基準」だ。1人当たり1万円以下の飲食なら、損金算入が制限される「交際費」ではなく、「飲食費」に計上し、その年に支払った全額を損金にできる。もし1人当たりの料金が基準を超えそうなら、別の飲食店に移動して2次会や3次会を開催すれば、それぞれの店での1人1万円までの支払いが損金になる。
 飲食費が1万円を超えると、損金にできるのは1年当たり一定額までに限られる。具体的には、接待飲食費を含む交際費の800万円以下の部分か、または接待飲食費の半額であれば経費にすることが認められている。飲食だけで年間1600万円を超えるなら、その半額をすべて損金に算入することができる。経費化が可能な交際費の範囲は幅広く、飲食費のほかに、観劇や旅行の費用、冠婚葬祭費、お中元などの贈答品代が含まれる。高市首相はトランプ氏にゴルフバッグや金箔を施したゴルフボールを贈ったが、税務上はそれらの費用も一定額までは損金にできることになる。また、飲食店やゴルフ場などに得意先を送るための交通費も経費に計上することが可能だ。送迎にはハイヤーやタクシーを使っても問題ない。
 ただ、税務署は、その中に本来は役員や社員が個人の財布から支出すべきものがあるか否かということを必ずチェックするので注意しなければならない。個人が支出するはずの交際費を会社が肩代わりしているなら、税務上はそのひとへの給与として会計処理し、社員や役員に所得税が課税されることになる。
 役員が負担するべき交際費を会社が肩代わりすると、臨時的に支給される役員報酬とみなされ、会社の損金にできない。もし交際費として損金算入してしまえば、法人税額を本来より過少に申告したことになり、追徴課税の対象となる。また役員報酬の支払いの際には源泉徴収の義務が生じるので、交際費処理していると源泉徴収漏れが発生することになる。税務署に否認されないためには、プライベートの飲食を交際費に計上しないのは当然として、仕事上で必要な支出であることを証拠として残しておくようにしたい。


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