政府税制調査会は6月11日、「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」を開いた。この専門家会合は、税務手続や適正・公平な課税・徴収のあり方、経済社会のデジタル化を踏まえた税務・税制のあり方について、税制調査会の総会で議論するための素材を整理していくもの。
今回の会合では、①国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題②税に対する公平感を大きく損なうような行為への対応③事業者のデジタル化・税務手続のデジタル化に向けた取組④個人住民税の現年課税化――について意見交換し、総会での本格的な議論を見据えた論点整理が行われた。
当日、財務省からは「国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題」「税に対する公平感を大きく損なうような行為への対応」など、課題ごとの現状について説明がなされた。また、国税庁が委員に配布した説明資料「事業者のデジタル化・税務手続のデジタル化」では、「国税庁が目指す方向性~取引から会計・税務までのデジタル化(デジタルシームレス)の普及~」として、事業者による日常的な事務処理について、①請求や決済のやり取りがデジタルデータで行われ②当該データが変更等されず保存されるとともに③仕訳もデータ連携により記録され④そのデータが税務申告・納税まで連携されるようなケース―では「入力作業の負担軽減や税務コンプライアンスの向上を図ることが期待される」としている。
総務省からは「個人住民税の現年課税化」についての資料が配布され、「現年課税化の意義」として、①所得発生時点と納税の時点を近づけることで、前年より所得が減少した者の負担感が減少する。ただし、退職所得、利子、一定の上場株式等の配当や源泉徴収口座内譲渡所得等については、個人住民税においても現年課税が行われている②所得税と同時期に課税が行われる結果、税を負担する者にとって分かりやすいものとなる③収入発生時に税を徴収するため、徴税が容易になり、税収の安定的な確保に資する――点などを挙げて説明がなされた。個人住民税の現年課税化については、給与支払者(特別徴収義務者)の立場から日本商工会議所が「特別徴収制度の下で、現年課税化を導入しようとすれば、企業は、従業員の自社以外の給与等の所得や寄附金額等を把握したうえで、従業員の1月1日現在の住所の把握、従業員の住所がある地方自治体ごとに異なる税額計算等に係る事務を行う必要がある。企業の納税事務負担の増加を招く個人住民税の現年課税化には反対である」としている。また、全国町村会も課税団体としての立場から「個人住民税の現年課税化については、町村や事業主の事務負担が増加することなどから、慎重に検討すること」と要望している。