漁業協同組合JFしまねの岸宏会長による不適切な会計処理などによって、法人税の納付が遅れ延滞金が発生するなどの損害を被ったとして、組合員の漁業者32人らが会長に対し1億円あまりの損害賠償を求めていた裁判で、最高裁は5月14日までに会長側の上告を棄却した。広島高裁松江支部が約3千万円の支払いを命じた2審判決が確定した。
この裁判は、会長の職務怠慢や、業務上必要のない「視察」での不適切な旅費・飲食費などの支出により、漁協に損害が生じたとして組合員らが約1億円の損害賠償を求めて提訴したもの。
1審の松江地裁は2024年6月、「県外への視察で旅費規定を超えた宿泊費や法人税などの納付が遅れたことによる延滞金の発生などは会長の不適切な事業運営によるもの」とし、会長に4150万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
2審の広島高裁松江支部は同年12月、会長が大型スーパーを視察した際の「旅費、飲食費の支出に違法性はない」として、1審よりも減額した約3千万円の支払いを命じていた。
岸宏会長は1944年生まれ。島根県出身。関西大学経済学部卒。89年島根県漁連常務理事、93年御津漁協代表理事組合長などを経て、06年漁業協同組合JFしまね代表理事会長に就任。10年には全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)理事、13年にはJF全漁連代表理事会長に就任し22年に退任するまで長くトップに君臨するなど、全国組織の上部団体でも要職を歴任した漁業界の重鎮として知られる。
退任後3年しか経過していないJF全漁連の会長時代にも不適切な会計処理がなかったかについては明らかになっていない。JF全漁連の本部は東京都中央区新川に置かれており、所轄の京橋税務署(中央区新富)、東京国税局(中央区築地)とは目と鼻の先だ。