ゼロゼロ融資  “融資後倒産”急増中

 新型コロナウイルスの影響を受けた企業を支えた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済ができず、倒産する企業が急増している。足元の倒産件数は前年に比べて1.6倍となった。背景にはゼロゼロ融資を受けた時には想定できなかった原材料高や人手不足がありそうだ。
 そもそもゼロゼロ融資は、コロナ禍で売り上げが急減した中小零細企業を支えようと2020年3月に政府が始めた。売り上げが前年比15%減るなど一定の条件を満たせば、実質的に無担保で最大3年間は無利子で融資が受けられる。22年9月の受け付け終了までに約245万件、総額40兆円以上の融資が実行された。融資を受けた多くの企業が、返済の猶予期間を3年間の無利子期間に合わせたため、今夏になって返済が本格化している。
 帝国データバンク(TDB)によると、ゼロゼロ融資を受けた後に倒産した企業は20年7月から今年7月までで922件に上る。特に今年1月~7月で354件と、前年同期(221件)の1.6倍に急増した。
 4000万円以上のゼロゼロ融資を受けた都内の飲食店店主は「8月で無利子期間が終わり、毎月の返済額が8万円近く増えた。足元では材料費が2割上がり、人手不足で時給も上げないと従業員も集まらない」と窮状を訴える。ある金融機関の担当者は「融資の返済と原材料高を乗り越えるには、コロナ前よりも収益力が高まっている状態が必要になる。返済開始とともに店をたたむケースが多い」と語る。
 TDBの推計では、倒産企業が借りていたゼロゼロ融資の総額は計約532億円に上り、焦げ付いた融資は最終的に税金で穴埋めせざるを得ない。政府は今年1月、返済が難しい企業に元本返済を最長5年間猶予する借り換え保証制度を新たに始めた。ただ企業の収益力が上がらなければ問題の先送りになりかねず、金融機関を中心に返済企業の事業転換などの支援が急がれる。


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