政府税調が4年ぶり答申  租税原則に「十分性」を追加

 政府税制調査会(会長=中里実東大名誉教授)は6月30日、中期的な税制のあり方の方向性を示す答申を岸田文雄首相に提出した。答申をまとめるのは2019年以来4年ぶりで、岸田政権では初めて。具体的な税率には触れず、経済社会の構造変化に合わせた税制の見直しを求めた。
 答申は、租税原則の「公平・中立・簡素」に加え、租税の「十分性」が重要と位置づけた。国債費が増大し、税収の割合が約4割まで落ち込んだ国の政が「将来世代に負担を先送りしている」と断じ、「持続的な経済成長を実現しつつ、租税の財源調達機能を回復することが重要だ」と指摘。税制全体では「経済社会の構造変化を見据えた見直しが必要」と訴えた。
 税目別では、消費税は「社会保険料を補完する財源として、税収の変動が少ない消費税がふさわしい。更なる増加が見込まれる社会保障給付を安定的に支える観点からも、消費税が果たす役割は今後とも重要」とした。過去に税率引き上げに触れた答申もあったが、今回は見送った。
 所得税では、働き方の多様化を見据えた所得控除のあり方を問いかけた。特に、共働きの世帯が増えていることなどから「配偶者控除、配偶者特別控除のあり方についても検討すべきだ」とし、「公平かつ働き方に中立的な税制」の構築を求めた。給与と退職一時金、年金給付の間の税負担のバランスにも留意する必要がある。
 自動車関係税は、電気自動車(EV)の普及で、車体税や燃料税の減収が続き、道路整備などの財源が不足していると指摘。EVへの課税のあり方について「見直しを図る必要がある」と促した。
 法人税では、条件を満たせば優遇税制が受けられる租税特別措置について、租税原則に「基本的に反する」と明記した。例えば、研究開発税制を受けられるのは全納税法人の1%程度で、受益しているのも8割が製造業と偏りが生じている。こうした背景から、客観的なデータに基づいて有効性を分析し、各措置の「廃止を含めたゼロベースの見直し」を求めた。


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